原発と賠償金。 誰が負担しているのか。
地震発生からもうすぐ6年が経過しようとしています。
当時は衝撃的な映像とともに多くにニュースが飛び交っていましたが、
最近では東日本大震災についてのニュースはかなり少なくなりました。
この記事では津波の被害や影響ではなく、原発の賠償金に焦点をあてていきたいと思います。
目次
1.東日本大震災とは
2011年3月11日午後 2 時 46 分ごろマグニチュード 9.0 を記録する地震が東北地方太平洋沖で発生、それに伴う巨大な津波により東北地方を中心とする広い地域が被災した自然災害。
この地震により、場所によっては波高10m以上の津波が発生し東北地方と関東の太平洋沿岸に壊滅的な被害が発生した。
行方不明者は18万人以上、建築物の全壊・半壊は400万戸以上。
そして現在も避難民は14万人以上となる。(2016.11月時点 復興庁)
当時は津波動画や写真などがニュースで頻繁に取り上げられ、あまりの悲惨さに衝撃を受けました。
また、CMでは「ACジャパン」のものがあまり多くなってしまい、ちょっとした問題にもなりました。
2.原発事故とは
地震発生後、福島第一原子力発電所において、放射性物質が漏出する重大事故が発生したものです。6基の原子炉のうち、1~5号機の電源が津波の浸水により故障し、原子炉を冷却できなくなり、メルトダウンが発生。
その後の水素爆発、冷却水漏れなどにより大気中、土壌、海水、地下水へ多大な放射線物質が放出された。
放射性物質は福島だけではなく周辺地域に広がってしまった。避難勧告は福島第一原発から30㎞離れた地域でも発令されました。
3.福島第一原発と東京電力の責任
東京電力は原発事故の原因について、想定していない大津波が原発を襲ったことにあるとしている。しかしながら、国際原子力機関の調査団は「日本の原発は津波災害を過小評価していた」とコメントしさらにあらゆる自然災害リスクに対して防御策を講じるべきだと述べた。
確かに今回の原発事故は想定できない程の大きな震災が主な原因ではあるが、それ以外にも原因はあるとされている。
東京電力福島第一原子力発電所事故調査委員会の報告書では、
「東京電力は従来の想定を超えた地震・津波が襲来する可能性、そして原発がそれに耐えられない構造であることを何度も指摘されていたにも関わらず、これを軽視し、十分な対策をとらなかったことが事故の根本原因だ」としている。
4.賠償金
現在、東京電力が支払った賠償金の総額は約7兆円です。(2017.2月現在)
個人賠償と法人賠償の割合はおよそ半々です。
賠償金の内容に関しては代表的な内訳は以下です。
(全てではありません、一部のみ抜粋。)
個人では
生命・身体的損害
→非難時の健康状態の悪化、健康状態悪化を防止するための医療費など
移住を余儀なくされたことによる精神損害
→長年住み慣れた住居及び地域が見通しのつかない長期間にわたって帰還不能など
早期帰還
→非難指示区域解除された地域へ帰還する際の生活上の不便さに伴う追加費用など
宅地、建物、借地権
→避難指示期間中に生じた市場価値の減少分を対象とした賠償など
住居確保費用
→移住する際の費用、住宅・宅地の購入、帰還する際の建替え・修繕費用など
田畑
→避難指示区域内にある田畑の非難指示期間中に生じた市場価格の減少分など
法人では
会社などの運営
→避難指示、出荷制限、風評被害に伴う営業損害、検査費用など
自主的除染
→放射線物質による汚染を懸念し、実施を余儀なくされた除染作業に伴う費用
(東京電力ホールディングスのホームページを参照)
5.賠償金の負担先
上記の賠償金は誰が負担するのか。
福島第一原発は東京電力が所有しているので、東京電力が支払うのが当然だと考えられる。
実際はどうのような仕組みで賠償金を被災者に支払っているのか見てみよう。
上の図のように福島の被災者に対して賠償金を支払っているのは東京電力ですが、
東京電力は7兆円もの賠償金を自力で支払うことは出来ません。
よって、原子力損害賠償廃炉支援機構を通じて政府にお金を借りたり、電力各社から一般負担金をもらって支払いをしています。
要するに、賠償金は電力各社からお金をもらい、政府からお金を借りて支払っているのです。
6.東京電力の業績と給与推移
ここではまず、東京電力の業績を見てみよう。
年 | 経常利益 | 純利益 |
---|---|---|
2010 | 2043 | 1337 |
2011 | 3176 | -12473 |
2012 | -4004 | -7816 |
2013 | -3269 | -6852 |
2014 | 1014 | 4386 |
2015 | 2080 | 4515 |
2016 | 3259 | 1407 |
※単位は億円。
図を見ると分かるように東日本大震災の起きた2011年に利益が急激に悪化している。
2011年、2012年が大きく悪化しているのは賠償金だけではなく、原発事故の対応する費用だと考えられる。
これと合わせて見てほしいのが下の図です。
下の図は東京電力の平均年収を表しています。
年 | 年収 |
---|---|
2010 | 757 |
2011 | 761 |
2012 | 653 |
2013 | 619 |
2014 | 684 |
2015 | 709 |
2016 | 733 |
2011年から急激に下がっています。
これは原発事故の賠償金のために福島で働く社員の給料をカットしたなどの要因があります。
その当時のニュースでは福島で働く管理職は給料30%カット、一般社員は給料20%カットと報道。その後、全社員での給料15%カットがありました。
しかし、2016年には給料を当時の5%の水準に戻すことになったようです。
7.結局、誰が賠償金を払うのか?
現状、東京電力が払っています。しかし、電力各社も一部負担金を払っている状況です。(東京電力から各電力会社への返済はありません)
東京電力には7兆円をすぐに支払うお金がありません。なので足りない分は原子力損害賠償廃炉支援機構を通して政府からお金を借りています。お金は20-30年かけて東京電力が返済していきます。
では、
お金が無いはずなのに給料が上がって、利益が出ているのはなぜか?
利益があるのに電気料金を値上げするのはなぜか?
給料や利益を賠償金の返済に充てるべきではないのか? など
私も最初はそのように思っていました。
しかし、東京電力は今後も継続的に生産活動をしていかなくてはいけません。
東京電力が生産活動を続けていくためには社員の流出を止めて、今以上に利益を出せる体制を作り上げていかなくてはならないのです。
万が一、東京電力が倒産し、政府が助けてしまうとそれこそ大量の税金を使うことになります。
また、政府としても東京電力には利益を上げてもらい、東京電力が社債を発行して資金調達できるようになるのを望んでいると思います。